鬼上司は秘密の許嫁?!溺愛されるなんて聞いてません
「えーっと、パスタランチのジェノベーゼで!おっ、お願いします」

慌てて決めると部長が近くを通った店員さんに声を掛け注文してくれる。
再び店員さんの頬が赤いのが目に入った。

だよね。
イケメンパワーの凄さを実感したから、今度こそ気持ちが分かる。
だからといって、特に他に感想は何もないけれど。
あるとすれば、何でこの仕事に就いたのか?
部長なら芸能界でも生きていけたと思うだけに、私が家族なら書類送っちゃったかも。

改めて見ると目とかめちゃくちゃ印象的だ。
ビー玉みたいに透明感あるし、睫毛も長いし羨ましい。
私が部長だったら色んな服を着こなして街を闊歩してたかも。
そうしてスカウトされて芸能界デビュー。
俳優とかで人気出て、あちこちでキャーキャー言われて、そらから―なんて思っていたら、部長が溜め息をつきながら髪の毛を掻き上げた。

「あまり見るな」

「えっ?」

「え?じゃない。上司の顔を不躾に見るヤツがいるか」

「私、そんなに見てましたか?」

「無自覚か」

「う。すみません」

そんなに見てる意識無かったんだけど。
これは失礼だったなと反省し、謝ると「まさか客の顔もそうやってじっくり観察してるんじゃないだろうな?」と睨まれる。
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