鬼上司は秘密の許嫁?!溺愛されるなんて聞いてません
『皆、ヤバい!本社の人間が明後日ここに来るぞ!!』

という社長の一声で、小さな社内は大騒ぎになった。

「それにしても何でまた本社のエリートが。繁忙期でもないのに。と言っても、悲しいことに忙しくて現場が回らない、なんて事ないっスけどね」

前田さんが舞台俳優の様にオーバーリアクションで悲しい表情をしてみせる。
こんな時でもお調子者の片鱗は隠せないらしい。
ちなみに社内で『イケメン台無し』とよく言われている。

そんな前田さんのお調子者ぶりに慣れている松山さんはそれをスルーして、食べ終わったカップラーメンを避け、今度はとろけるプリンに手を伸ばした。
渋い顔に反して、かなりの甘党だったりする。

「おい、悲しくなることを言うな。まぁ、確かに昔は本社の応援とか貰ったりした頃もあったけど、最近はな…。今回にしても売り上げとか諸々の問題を看過出来なくなったからじゃねぇの?うちの業績、悪くねぇけど特別良くもねぇからな」

そう言ってプリンをひと口パクリとする。

「昔からの取引先あるから安定してるけどよ。最近店じまいする所もちょこちょこ出てるしな」

「確かに。今のご時世、安定だけじゃ将来性ないですもんね」

松山さんの言葉に前田さんが同意し頷く。

安定してるからいいと思うけど、将来性も考えなきゃなのか…私に経営は絶対に無理そうだ。
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