鬼上司は秘密の許嫁?!溺愛されるなんて聞いてません
「あとはモール店が不調なのが大きいですね」

石原さんのキッパリした発言に、ふたりは「はぁぁぁ~っ」と盛大な溜め息をついた。

モール店か…。あんなに頑張ったのにな。

それは、三ヶ月前に近くの大きな人気のショッピングモールに移転し出した店のことだ。

久し振りの大仕事として本店が力を入れたものの、予想とは裏腹にお客さんの入りは開店した週末三日間だけ好調で、一ヶ月後には一気に下降。
なので、当然だけど売り上げも少ない。
それが足を引っ張り、本店は以前よりも売り上げを大きく下げてしまっていた。

売り上げを伸ばそうとしたのが裏目に出るなんて…まさかのまさか、だよね。

明らかに今回の新規出店が失敗したというのは素人の私でも分かったし、入社して初の大仕事だっただけに―私は手伝った程度だけど―ショックは大きかった。

ショックだけで済めばいいのだけれど、これがかなり痛手のようで…。
というわけで、本社からやり手の社員が今回送られて来ることになったみたい。

だけど、どんな人が来るのかなぁ?
本社勤務ってことは相当優秀だよね。

私は「フム」と腕を組んで天井を見て、やってくるであろう社員を想像してみる。

眼鏡をかけて、ピシッとしたスーツ姿の五十代くらいのテキパキ仕事を熟す官僚系を思い浮かべた。

いや、待てよ?正反対の人かも。
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