ひと駅分の彼氏
「紗耶、勉強しているの?」


質問しながら近づいて生きて私の手元を確認する。


辞書の上に置かれている写真を見て、一瞬で表情が曇るのがわかった。


「受験生なんだから、頑張りなさい」


母親は小さな声でそう言い、私の肩を軽く叩いた。


そしてそのまま部屋を出ていってしまった。


私はしばらく母親の出ていったドアを見つめていた。


私は母親にあんな顔をさせたいわけじゃない。


ちゃんと勉強をして、自分の夢を叶えたい。


両親だって、私の夢を応援してくれている。


でも……。


私は机に視線を戻した。


乱雑に散らばった勉強道具たち。


それは机に置かれているだけで、ここ数週間全く使われていないものたちだった。


辞書の上にはうっすらとホコリまで積もっている。


「なにしてるんだろ、私……」


自分の声が虚しく部屋の中に響き渡った。
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