ひと駅分の彼氏
真琴がそう言ったとき、電車内のアナウンスが聞こてきた。


次の駅に到着するらしい。


電車はブレーキがかかり乗客の体が一斉に揺れる。


「じゃあ、俺はここで降りるから」


「待って!」


咄嗟に真琴の手を握りしめていた。


真琴が振り返り、一瞬だけ悲しげな表情を浮かべる。


しかし次の瞬間にはいつものように暖かな笑顔を浮かべていた。


「明日また会えるから。学校に行きなよ」


真琴はそう言うと、私の手をやんわりとほどいて1人でホームに降りてしまった。


私はその後ろ姿を必死で目で追いかける。


真琴の姿はあっという間に人混みに紛れて、消えてしまったのだった。
< 43 / 108 >

この作品をシェア

pagetop