君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
(お仕えしている以上友人としてっていうのは難しいけど、周囲の雑音から王妃様のこと守らなくては!)

それからは根拠のない噂話で盛り上がる口さがない者たちに、
「王妃陛下に対する不敬罪」だと脅して回ったり、
くすくす笑いが聞こえようものなら、父親譲りの鋭い目線で威嚇したりした。
ついには”王妃付きの護衛騎士が怖い”という話がロートシルトの耳にまで届くようになり、
「ちょっと頑張りすぎじゃない?」とたしなめられるほどだった。

そうやってクララが孤軍奮闘していたある日のこと。
「王妃様。王妃様宛ての手紙が王城に届いたんですけれど、宛名の人を存じ上げなくて。お知り合いでしょうか?」
ハンナが差し出した手紙の宛先を見たジゼルは顔を綻ばせる。
「アランからだわ!」
「アランとは誰でございますか?」
「アランはね、私の唯一の幼馴染なの。私の乳母の孫で、年が近かったから一緒に遊んだり勉強したりして育ったの。あぁ、懐かしいわ。」

女の子みたいとジゼルがからかったこの丸っこい癖字も、今では懐かしい。
「ご友人はなんとおっしゃっていますか?」
「アランは医者志望でユーフォルビアでも医学生だったのだけど、マグノリアでも学びたいってこちらに留学してきたのですって。下宿先の住所まで書いてくれてるわ。是非とも会いたいけれど、この今の状況では無理ね。」
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