君の愛に酔う　　　　　　～藤の下で出会った2人の物語～
ジゼルが口ごもっていると、エミリアが話を続けた。
「私、いつも王妃様の御髪を調えていますから、何となくそうじゃないかって思ってたんです。最初は光の加減かなとも思ったんですが、王妃様の生え際はあきらかにブルネットじゃないですから。何か理由があるんだろうと思って、私も黙っていたのです。」
「あなたに気を遣わせてしまったわね。こちらこそごめんなさい。本当の私は赤毛なの。」
「赤毛でございますか…」
「この国で赤毛は良い印象を持たれていないでしょう。だから嫁ぐときに継母に無理矢理染めさせられたの。私もどうしようかと思っていたけど、アランも気にしてくれていたのね。」
「そうでしたか。確かにこの国では、赤毛の女性は魔女と関連付けられてあまり良いイメージを持たれていません。学校とかでも虐められやすいです。特に貴族の方たちは赤毛を見下す傾向にあります。」
「私が赤毛だって知れたら、とんでもないことになるわね。」
「でも、でもっ。王妃様が赤毛だと知っても、エミリアは王妃様のことが大好きです。幸い、王妃様の髪のお手入れをしているのは私ですから、アラン様からいただいたこれで綺麗に染め直しましょう。このことは王妃様と私だけの秘密です！」
「みんなを騙しているようで、心苦しいわ。」
「少なくとも王妃様は嘘をついたわけではございません。女性がおしゃれで髪色を変えることはよくあることですよ。」
エミリアは早速、その日のジゼルの入浴時に染粉を使って綺麗に染め直してくれたのだった。
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