君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
「王妃様は慈善事業にとても熱心に取り組んでおられるそうですね。結構なことです。」
執務中のユリウスにシュトラウスが話しかける。
「なんでも王妃様が自ら裁縫を教えているとか。」
「子どもたちの上達が早いって喜んでたな。最近ではユーフォルビア語も教えているらしい。」
「ユーフォルビア語まで?」
「ユーフォルビアは農業の他にも繊維産業が盛んだからな。ユーフォルビア語の知識があった方が就職もしやすいと考えてのことらしい。」

最近ジゼルと夕食を共にすると、必ずと言っていいほど孤児院での女子教育について話をされた。
孤児院では基礎教育は受けさせてもらえるが、職業教育はできていない。
今まで手が届いていなかったことに王妃がやりがいを見出してくれているのは
ユリウスにとっても有難かった。
「それに王妃が王城の外に目を向けてくれているのは好都合だ。」
「ウィステリアへの侵攻はもう避けられないのでしょうか。」
「なんとか凌いでいるが、いつまで耐えられるか。なんせシュヴァルツ公が積極的だ。」

最近、ユーフォルビアからの圧力が日増しに大きくなっている。
国力の回復に力を注ぎたいユリウスにとって頭の痛い話だ。
王都はずいぶん復興して街も賑わっているが、地方に目を向けるとまだまだ内戦の傷跡が癒えていない。
とりあえずは最もらしい理由をつけてユーフォルビアの要求をかわすしかなかった。
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