君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
「ふん、あの若造め。誰のおかげで国王になれたと思ってるんだ。」
王城内のルイーザの居室で酒を飲みながらふんぞり返っているのはシュヴァルツ公だ。
「まぁ、お父様、ずいぶんと荒れておいでですわね。」
「ユーフォルビアと組んでウィステリアに侵攻するという条件をのんだから、あの小娘との縁談を認めてやったというのに。今になって、渋ってきよるとは。こんなことならわしの可愛いルゥーの願いを叶えてやるんだった。」

「そんなこと思っていらっしゃるの、お父様。」
ルイーザはニヤリと笑う口元を扇子で隠す。
「今からでも遅くありませんわよ。」
「どういうことだ?」
「最近、ギーゼラが何をしてらっしゃるかご存知?孤児院に入り浸って孤児たち相手に教師の真似事ですのよ。」
「ほーそれはまた暇な王妃だな。社交のひとつもせずに。」
「何か面白いネタがないか、探らせているところですの。それでね、お父様。」

ルイーザは父の耳元に顔を近づけてコソコソと囁いた。
娘の悪だくみに父親も思わず舌を巻く。
「狡猾さはわしに似たのかな。天晴れだよ、ルイーザ。お前は小娘のしっぽを掴むだけでOKだ。あとはわしに任せなさい。」
「お願いしますわね。」
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