君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
ジゼルが孤児院で洋裁の授業をするようになってほどなくして、
幼馴染との再会の時は訪れた。

「ジジ、ジジじゃないか!」
突然廊下からから大きな声が響き渡る。
その懐かしい声にジゼルも嬉しさがあふれる。
「アラン!」
懐かしさがこみ上げてに無意識のうちにハグしてしまったが、
エミリアの咳払いですぐに我に返って身体を離す。

「あの、王妃様。本当にお元気そうで何よりだよ。エミリアから君の様子を聞いていたけど、実際に会えて安心した。」
「えぇ、私も。こんなに嬉しい気持ちは久しぶりだわ。エミリアからあなたのことを聞いて、私も何かしたいと思って孤児院で裁縫の授業をしているの。」
「そうか。ジジは、いや王妃様は昔から裁縫はプロレベルだったもんな。」
「あなたは私にとっては身内同然だから、昔のようにジジって呼んでちょうだい。ばあや仕込みの私の特技が、こんな形で役に立って嬉しいわ。」

この日以降、アランは診察の日以外にも時間ができたら孤児院に顔を出すようになった。
ジゼルと一緒にユーフォルビア語を教えてあげることもあれば、
勉強を見てあげたり、一緒に遊んであげたりして、
アランはあっという間に男の子たちの良い兄貴分になった。
アランに会いたい一心でエミリアも可能な限りジゼルに同行するようになり、
裁縫ができない代わりに、小さな女の子たちのヘアアレンジを率先して行ってあげた。
エミリアの職人レベルのヘアアレンジはたちまち女の子の心を鷲掴みにし、
今では美容師になりたいという夢を持つ女の子たちまで出てくるほどだった。

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