君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
まるでスポンジのように知識を吸収していく子どもたちに、
ジゼルの胸は充実感でいっぱいだ。
子どもたちにも達成感を味わってもらいたいと、
今では自分がプライベートで使う小物は孤児院に依頼し、
完成したものは正当な対価で買い取った。
自分の作ったものがお金になると分かった子どもたちは、
さらに腕を磨いていくので好循環だ。

自分が発案した慈善事業に一定の手ごたえを感じていたそんなある日。
「今日も疲れたわね。お腹が空いたわ。」
「ソフィアたちが美味しい夕食を準備して待っていますよ。」
「そうね、急ぎましょう。クララ、馬車を出してちょうだい。」
ジゼルたちがいつものように王城へと帰ろうとしていたその時だった。
「あ、王妃様お待ちください。」
「どうしたの?」
「門の前で立っているの、アランじゃないでしょうか?」
エミリアの指さす方には確かにアランがいた。
孤児院に用があるならいつものように入ってくればいいのに。
どうしたのだろう。
「ちょっと声をかけてくるから、ここで待機してて。」
馬車を降りたジゼルは、アランに近づいて声をかける。
「アラン、どうしたの?何をしているの?って、あなた目が真っ赤だわ。」
アランは虚ろな目でジゼルを見つめると、声を絞り出した。
「おばあちゃんが、亡くなった。」
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