君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
「なんですって?おばあちゃんって、ばあやのこと?」
「うん。今朝、じいちゃんから手紙が来てさ。ばあちゃんここ数日体調が悪かったみたいなんだけど、肺炎をこじらせてあっけなく逝ってしまったって。」
「そんな。どうして、突然。さようならも言えないうちに逝っちゃうなんて。」
ジゼルの両の目からは止めどなく涙が溢れていた。

母親が亡くなってからは、母代わりとしてジゼルを育ててくれた大好きな乳母。
もし自分に子どもができたら、真っ先に抱っこしてほしいと思っていた。
まだまだ元気でいてくれると思っていたのに、こんなにも早く旅立ってしまうなんて。

人目もはばからず涙を流すジゼルをアランはそっと抱き締めた。
アランにとっても祖母は大切な存在で、ショックから立ち直れない。
この悲しみを分かち合えるのは世界でただ二人だけだった。

「俺はしばらくユーフォルビアに帰るよ。おばあちゃんの葬儀をしないと。一人残されたじいちゃんも心配だし。」
「ごめんなさい。私、こんな時なのにユーフォルビアに帰れない。」
「ジジの気持ちはおばあちゃんが一番理解してる。俺がおばあちゃんにちゃんと伝えるから。」
「うんうん。お願いよ。私の分までしっかり天国に送ってあげて。」
「約束する。だからもうジジも泣かないで。クララさん、そこにいるんだろう。王妃様を頼む。」
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