君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
「それについては確認が取れております。同姓同名のユーフォルビアからの留学生が医学部に在籍しているようです。」
シュヴァルツ公の威勢に負けじとシュトラウスが声を張り上げる。
「なるほど。王妃様の幼馴染がマグノリアに留学していると。まぁそれはそこまで不自然なことじゃない。じゃあ、この泣きながら抱き合っている写真はどう説明をつけますか?幼馴染の距離感じゃないでしょう。」
シュヴァルツ公の声に呼応するようにあちらこちらから野次が飛ぶ。

「それは・・・この日は…」
攻撃的な視線にさらされしどろもどろになっているジゼルを見かねたクララは思わず声を張り上げる。
「恐れながら申し上げます。この日、アラン殿は王妃様の乳母殿の訃報を伝えに来てくれたのです。王妃様は最愛の乳母殿の訃報に取り乱されて、アラン殿が慰めてくださっていたのです。決して陛下に顔向けできぬようなやましいことはございませんでした。この2人のそばには、私と侍女のエミリアがおりました。」
「君は王妃の側近じゃないか。主の味方をするのは当たり前だろ。信憑性に欠けるね。」
シュヴァルツ公の反論にクララは黙り込んでしまう。

「シュヴァルツ公、いいですか。」
「何だね、マインツ子爵。」
「私の調査によると、この写真が撮られたのは王妃が最近支援されている孤児院だそうです。院長に話を聞いたところ、2人はとても仲睦まじい関係のようだとのことです。」
(こいつ、絶対に院長の言葉を歪曲しているな。)
「なんと、なんと。ということは、王妃は逢引の隠れ蓑として慈善事業を利用していたと、こういうことですかな?」
< 117 / 247 >

この作品をシェア

pagetop