君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
「違います。私は子供たちの未来のためを思って…」
ジゼルも声を振り絞って弁明するが、多数の野次でかき消されてしまう。

「陛下のご厚意をこんな形で踏みにじるとはなんということか。我が国の福祉の要である孤児院を己の欲のために利用するなど言語道断。こんな女が王妃など我が国の恥です。陛下、王妃との離縁を要求します。」
「私もシュヴァルツ公の意見に同意します。このような女に頭を下げることなどできません。」
「私も。」
「私も。」

シュヴァルツ公の意のままに進んでいく会議にクララは恐怖を覚えていた。
ジゼルは既に戦意喪失していて反論する気配はない。
宰相のシュトラウスもここまで大局が決まっていると、覆すことは難しいのか諦めの表情だ。
最後の頼みの綱の国王はというと、手を組んで目をつぶったまま微動だにしない。
(陛下、王妃様を信じてあげてくださいませ!)

「あい、分かった。」
ユリウスのよく響く声が議事堂に響き渡る。
「この件についてここで結論を出すのは早急だ。沙汰が出るまで王妃は自室で謹慎とする。ラーデマッハー大尉、王妃を連れて行きなさい。」
議事堂の空気にいたたまれなくなったクララは、目が虚ろになっているジゼルを抱えて、足早に退出した。
(こんなの絶対シュヴァルツ公の罠に決まってるわ。なんで王妃様がいつもこんな目に合うのよ。)
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