君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
謹慎中のジゼルは抜け殻のように無気力状態だった。
ハンナたちがあの手この手で励まそうと試みるが、ジゼルには届かない。
食事もまともに取らないので頬はこけ、みるみるやせ細っていった。

(あー愉快愉快。こんなに上手くいくなんて。)
王妃の不倫の噂で持ちきりの城内を歩きながらルイーザは得意満面だった。
評判が地に落ちたジゼルに変わって、ルイーザが王妃になるべきではという声も聞こえるようになった。
(分かったかしら、ギーゼラちゃん。人の物を横取りするからこんな目に合うのよ。あんたを追い落とすまであと一歩。)

ユリウスが宰相を連れて地方に出張の公務に出向いたタイミングを見計らって、
ルイーザはジゼルの部屋を訪ねた。
クララは騎士団の仕事をしているし、ジゼルの侍女たちには根回しして用事を言いつけてある。
今は部屋にはジゼルしかいない。

「王妃様、入りますわよ。」
やつれた顔のジゼルを見て、ルイーザは心の中で笑いが止まらない。
「今日は国王陛下の代理で参りました。国王陛下は王妃様との離縁を望まれております。こちらにサインして、速やかに王城から退去するようにとのことです。城の裏口に馬車を既に手配しておりますので、早く。」
睡眠不足で判断力が鈍っていたジゼルは、ルイーザに言われるがまま書類にサインする。
もうすべてがどうでも良かった。
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