君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
「こんな高価なものいただけないよ。これじゃ、うちの馬全部持って行ってもらわないと。」
「あなた方の善意は私にとってこのダイヤ以上の価値があるのです。受け取ってください。」
「あんた、訳ありなんだね。こんな大きなダイヤ持ってるし、その服だってボロボロだけど上等なやつだし。ここで会ったのも何かの縁だし、出来るだけのことはしてあげる。」
「ありがとう。」

女性はジゼルを馬小屋に案内して、好きなものを1頭選ぶように行ってくれた。
ポニーしか乗ったことがないジゼルにとって、
あまり大きな馬は乗りこなせない。
そこで一番小柄な若い牡馬を選んだ。
「こいつは身体は小さいけど、体力は十分だから。」
女性も太鼓判を押す。
せっかくだから1泊していきなとも言ってくれたが、
一刻も早く遠くへ行きたいジゼルはそれを丁重に断った。
ジゼルの決意を尊重してくれた女性は日持ちがするからと牛乳とビスケットを持たせてくれた。

「今日は天気が良いから月明かりがあるだろうけど、森には入っちゃいけないよ。それだけは約束して。」
「お姉ちゃん、また会いに来てね。」
「えぇ必ず。その時は今日の御恩に報いらせて下さいね。本当にありがとう。」
譲ってもらった牡馬に跨ったジゼルは先ほど来た道とは反対の方向へ駆け出した。
(どうか見つかりませんように!)
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