君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
(クララ、あなたに教えてもらったことが私の命を救ってくれたわ。)
その後、夜通し田舎道を疾走してなんとか朝を迎えた。
今は川のほとりで休憩している。

一晩頑張ってくれた牡馬の背を撫でながらジゼルは話しかける。
「あなたは私の救世主(ソテル)よ。私の逃避行にあなたがいてくれて良かった。」
先ほどこのあたりの住人に聞いた感じだと、
ジゼルたちは王都圏をわずかに外れて北上しているようだ。
このままいくとコルヌ半島にたどり着くがその先は海だ。
「ねぇ、ソテル。いっそのことウィステリアにでも行ってみる?」
何気なく呟いた言葉だったが、実は名案ではないかという気がしてきた。

ウィステリア王国ー--最愛の母の祖国。
世界中から様々なものや人が集まり、活気にあふれた国だとか。
そこに暮らす人々はジゼルやエドウィナのように赤毛も多いという。
(ウィステリアならありのままの私で暮らせるかも。)
他に行くあてのないジゼルはとにかくウィステリア王国を目指すことにした。
(お母様、ばあや、私のことをどうぞお守りください。)
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