君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
ユリウスとしてはアランという男を王城に召還して身元を明らかにしたうえで、
王妃共々厳重注意するという処分で済まそうと考えていた。

それが、である。
ジゼルから離婚を申し出てくるとは。
しかもどこから情報得たのかシュヴァルツ公がそれを把握していて、
国王夫妻の離婚が成立したとユリウスが帰って来た時には既成事実にされていた。
シュヴァルツ公とルイーザが裏で手を引いているのだろうが、
いかんせん目撃者もおらず証拠がない。
(クソッ。またあの狸と女狐にしてやられた。)
国王になってからもシュヴァルツ公を制御できない自分の不甲斐なさに
ユリウスは執務室の壁を何度も叩いた。
せめて王妃の安否を確認せねばと密偵を放ったが、まだ知らせはなかった。

問題は次から次へとやって来る。
議会から王妃不在は対面が悪いという声が上がり、側室のルイーザなら家柄も申し分なく、
彼女を格上げしろという声が出始めた。
ルイーザを正妻になんてユリウスの中では論外だったが、
さらに深刻な問題がユリウスを襲う。

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