君の愛に酔う ～藤の下で出会った2人の物語～

ユリウス国王との面会から1週間後。
アランはハートシードに到着した。
隣にはジゼルの護衛を務めていたクララがいる。
どこからかこの話を聞きつけた彼女がロートシルト団長に直談判して着いてきたのだった。
周囲に怪しまれないために新婚の夫婦という設定になっている。

「噂には聞いていたけど、本当に発展しているのねぇ。そしてこの街のどこかに王妃様がいるのね！」
「クララさん、あなたウィステリア語は？」
「クララさんじゃなくて、クララね。そして私はウィステリア語はさっぱりだからコミュニケーションはあなたに任せます。」
「了解です。」

2人は街を散策している体を装って、情報収集する。
やはりジゼルは街に出てきているようだ。
だが病院付近だと一目につきやすい。
なんとか自然に話しかけられる機会はないかと伺っていると、
耳よりの情報が入ってきた。
メインストリートから少しわきに入ったところにある洋菓子の店に
月に何度かジゼルが訪れているという。
人通りが少ない通りに面しているのでうってつけだ。

洋菓子店と同じ通りの宿に部屋を借りて、
翌日から早速張り込みを開始すると、その６日後にジゼルが店を訪れた。
「アラン、アラン！あれは絶対に王妃様よ。」
「ほんとだ。しかも一人で来てる。今がチャンスだね。」
クララは通りに誰も入ってこないように監視し、
ユリウスは何気ない感じで店の前に立つ。
店内で話しかけるのは危険だ。店員が何か勘繰るかもしれない。
数分後、大きな袋を抱えたジゼルが店から出てきた。