君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
ユリウスがジゼルに宛てた手紙には
ユリウスの思いが綴られていた。

そこにはジゼルの大切な思い出である藤棚での出来事が記されていた。
(やっぱりあの時のアドニスは陛下だったのね。)
あの日以来、いつかあの少女に会いたいと思っていたこと、
ジゼルと初対面した時に黒髪だったために全く気付かなかったこと、
仕事にかまけて、ジゼルを守ってあげられなかったことを謝りたいこと、
ジゼルが置いていった離婚届に自分はまだサインしていないこと
などが綴られていた。
『もし私のわがままを許してくれるなら、私は貴女ともう一度やり直したいと思っている。』

ジゼルだってユリウスのことが嫌いで別れたわけではない。
自分の記憶の中の美少年がユリウスだと確定した今、ジゼルももう一度ユリウスに会いたいと思った。
(今度こそ私たちは本当の夫婦になれるかもしれない。)

「こんな戦争のさなか、マグノリアからハートシードまで来るのは大変だったでしょうに。ありがとう。こちらの手紙も私が責任もってウィリアム国王にお渡しします。」
「もしウィリアム国王陛下がその手紙に賛同くださるなら、ユリウス国王が会談したいと言っていると伝えてくれ。」
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