君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
「ローリー卿、これどう思う?」
ウィリアムはユリウスからの手紙を側近のローリー卿に差し出す。
「状況はやはり我々の予想通りでしょうな。あちらの国王も我々と接触する機会を狙っていたと。」
「ユリウス国王と会うか。」
「まぁ仮にこれがあちらの罠だったとして、今われわれの手中にはラーデマッハー中将の娘がいるわけです。もしもの時の最低限の保険にはなるかと。」
思わずクララが身構えたので、ウィリアムがなだめる。
「口が悪いぞ、ローリー卿。クララ嬢、そんなに怯えないで。冗談だよ。」
「私は割と本気ですけど。」
「そりゃこちらも国の存亡がかかっているから、お人好しでばかりもいられないけどさ。」

「じゃあ、ちょっと今からユリウス国王に返事を書いてくるから、君たちはデザートでも食べてゆっくりしておいてね。」
< 158 / 247 >

この作品をシェア

pagetop