君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
「で、これがウィリアム国王からの返事というわけか?」
「はい。」
「お前はあちらに言われるがままにのこのこ一人で帰って来たのか?」
「はい…」

ここはウィステリア王国の王都にほど近いリンデンバーグという街。
この街にラーデマッハー中将は自軍の本部を設置していた。
アランは今、ラーデマッハー中将に鬼気迫る尋問を受けて失禁しそうになっていた。
「なぜクララを一人残してきたのだ、馬鹿者が!人質にされたではないか!」
「中将、落ち着いてください。」
「そもそもの原因はお前だろうが、ロートシルト。何故クララを行かせたんだ。娘に何かあったら、お前の首は私が叩き切るからな。」
「ウィリアム国王陛下は私やラーデマッハー大尉のことはあくまでジゼル様の友人として扱ってくれています。縄でしばられているわけでもございませんし。」
「口では何とでも言えるのだ。信用できん。」

「落ち着け、中将。お前の娘がウィステリア王国に行くことは私も承知していた。それに、」
ユリウスはラーデマッハー中将にウィリアムからの手紙を突き付ける。
「明日の午後、リンデンバーグにあるあちらの別荘に招待いただいた。クララも同行させるそうだ。」
「そんなにあっさりと返してくれるものでしょうか。何か裏があるかもしれません。」
「それは私にも行ってみなければわからん。でもあちらが誠意を見せてくれているなら、こちらも同じく誠意を見せる必要がある。分かったな?」
「御意。」
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