君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
「この戦争が終わったとして、敗戦の責任は貴方が負わなければならないのでは?それではシュヴァルツ公の思う壺な気がしますが。」
「もちろん、最終的に進軍の命令を下したのは私です。それ相応の責は果たします。降伏後の賠償内容について話し合う席で、ウィリアム国王陛下にこれを突き付けていただきたいのです。」
ウィリアムが差し出したのは、
シュヴァルツ公が自身が所有する鉱山で、孤児や人身売買されている奴隷たちを違法労働させていることを示す資料だった。
「この事実を掴ませてくれたのは、今は貴方のもとにいるジゼルです。」
「ジゼル⁉」
「はい。ジゼルが行方不明になったことを知った私はすぐさま追手を手配しました。結果的にジゼルは見つからずじまいでしたが、ジゼルを城から連れ出した男たちを捉えることには成功したんです。尋問でもなかなか口を割りませんでしたが、金銭と身の安全を保障したらペラペラと喋ってくれましてね。」
「シュヴァルツ公が否定できない公の場でその事実を突きつけろと。」
「これを機にシュヴァルツ公とその一派を一掃します。大きな痛みを伴うでしょうが、膿は出し切らなければ。」

自国の恥を晒すことになるというのに、この青年国王はなんと清々しい顔をしているのだろう。
その姿は、
生来身体が弱かった父が早くに亡くなったために若くして即位し、
周囲の大国に飲み込まれないように必死にもがいていた自分の姿に重なった。
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