君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
「なぜユーフォルビアに侵攻するのですか?」
ウィリアムの出した条件に思わずロートシルトは声を上げた。

「我々は他国の領土になど興味はない。」
ウィリアムの代わりにローリー卿が話し始める。
「だがこの戦争が始まって以来、同盟国のハイドランジアから奇妙な報告が上がってきている。」
「それはどのような・・・」
「ハイドランジアからは『ユーフォルビア側では負傷して一度戦線を退いた兵隊が、ろくに治療を受けずにまた戦地に送られているようだ』と報告があった。しかもこれらの兵士は異様な興奮状態にあったかと思えば、戦場で自暴自棄に陥って発狂しだすそうだ。これがどういうことを意味しているか分かるかな?」
「・・・麻薬だな。」
「いかにも、ラーデマッハー中将。ユーフォルビアの兵士たちは麻薬浸けにされて無理矢理戦わされている。ユーフォルビアだけなら勝手にしてくれればいいが、国境を接している以上こちら側が汚染されるのも時間の問題だ。そういう意味ではマグノリアも同じだと思いますがね。」

ユーフォルビアが麻薬を栽培しているのではないかという噂は以前からあり、
ユリウスやロートシルトもその噂は把握していた。
しかし麻薬は闇ルートで売買されていて、摘発自体も難しく、出所を突き止めることは出来ないでいたのだ。
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