君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
それからはユリウスもロートシルトもラーデマッハー中将も
目まぐるしく動き回った。
ゲッティンゲン中将やシュヴァルツ公派の者に知られないように、
細心の注意を払って準備を進めなければならない。
しかも計画実行の日は目前に迫っているのだ。
ユリウスが不在としている王城ではシュヴァルツ公が我が物顔でやりたい放題らしいが、
宰相シュトラウスがなんとか国王派の貴族をまとめ上げて対抗しているらしい。

(いよいよ明日か・・・)
決戦の日を明日に控えて、
ユリウスは自分のテントで物思いに浸っていた。
自分の計画が上手くいったとして、シュヴァルツ公は失脚するだろうか・・・
シュヴァルツ公が失脚したとしても、自分も王位を追われるんじゃないか・・・
そもそもジゼルとやり直せる日がくるのだろうか・・・
何事もネガティブに捉える癖は健在で、自嘲的な笑いが出てしまう。

「何か面白いことがあったのですか?」
突然女性の声が聞こえてきたので振り返ると、そこにはクララの姿があった。
「陛下、突然申し訳ございません。何度かノックしたのですがお返事がなかったので、勝手に開けてしまいました。」
「あぁ、いや。私も考え事をしていて全然気づかなかった。それで、何か用かな?」
「ずっとお忙しそうだったので、渡すタイミングがなかったんですけれど。」
そういってクララは1通の手紙を差し出した。
< 168 / 247 >

この作品をシェア

pagetop