君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
「おはようございます、陛下。よい朝ですな。」
ピシッと軍服に身を包んだゲッティンゲン中将がユリウスに声をかける。
「あぁ、いよいよだ。」
「陛下から進軍の命令を受けた時、実のところ命令を拒絶しようかと思いました。大義のない戦争には参加する意味が見いだせないですから。ですが、先日の会談で陛下の覚悟を聞いて、私も覚悟を決めました。陛下のために、我が軍は最後まで戦います。」
「ありがとう。」
「さぁ、そろそろ教会の鐘が鳴りますぞ。」



一日の始まりを告げる鐘の音が響き渡ると、
ゲッティンゲン中将の陣には敵の大群が一気になだれ込んだ。
ゲッティンゲン軍は早朝の奇襲に対応が取れず、末端の兵士などは早々と降伏するものもいた。
とはいうものの、そんなに簡単にはいかない。
3人の中将が率いる軍で、ゲッティンゲン軍が最も人数が多いし、
シュヴァルツ公がバックにいることから最新鋭の武器を配備している。
最初の突撃こそ大混乱を引き起こしたが、徐々にゲッティンゲン軍も立て直して反撃に転じてきた。

「さすがは軍事大国。たった一軍であってもそうやすやすとは討てませんな。」
ウィステリア軍の将校がロートシルトに声をかける。
「本来なら誉め言葉として受け取りたいですが、今は複雑ですね。」
ロートシルトは苦笑いを浮かべる。
「ただここを突破さえすれば、あとはそんなに難しくはないかもしれませんよ。」
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