君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
「退路を塞げ、誰ひとり逃がすな!」
ロートシルトは声を張り上げた。

敵がここまで来るはずがないと高を括っていたいたのか、
ゲッティンゲン軍の本陣の人間は逃げまどっている。
その混乱の中でいち早くゲッティンゲン中将の姿を捉えたロートシルトは
誰よりも早く逃げ出そうとするゲッティンゲンを拘束して中央に引きずり出した。
いつも偉そうにふんぞり返って部下を顎で使っていたゲッティンゲンは、
いまや袋のネズミである。
恐怖におびえ、いまにも失禁してしまうのではないかという顔をしていた。
「こ、こんなことしてどうなるか分かっているのか、ロートシルト!」
ゲッティンゲンは声を震わせながら、虚勢をはる。
「これは裏切りだ。伯父上に報告してお前を斬首してや・・・ヒェッ」

「うるせーよ、ハゲ。斬首されんのはお前だ。」
ゲッティンゲンの首に剣を突き刺しながら、ロートシルトはゲッティンゲンに侮蔑の眼差しを向ける。
伯父の威光を笠に着て威張り散らしていたくせに、いざという時は我先に逃げようとする。
そんな上官の姿に吐き気がした。
こいつのせいで一体どれだけの仲間が犠牲になっただろう。
「陛下はシュヴァルツ公一派の愚行に制裁を下す決意をされた。お前はその第一歩だよ。」
「おい、待て。俺は何も悪くないだろ!この戦争だって別に俺が吹っ掛けたわけじゃない。そうだ!お前、陛下と懇意だっただろ?陛下にとりなしてくれ、頼む。この通りだ。」
ロートシルトはみっともなく足に縋りついてくるゲッティンゲンを振り払った。
そしてエドワーズ将軍に道を譲る。
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