君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
「シュヴァルツ公こそ、経験豊富で人望もあり、この国を率いていくに相応しい方ではないでしょうか。」
そんな声があちらこちらから上がり始める。
シュヴァルツ公はその声に満更でもないようで、ニヤニヤとした笑みを浮かべる。
「いえいえ、私のようなものが国王などおこがましい。でもそう皆さんが言ってくださるのであれば引き受けねばなりませんな。」
そう言って、シュヴァルツ公はあろうことかユリウスしか座ることの許されない玉座に手をかける。
そして今にも腰を下ろそうとしたその時。

「何をしている、シュヴァルツ公。そこは私の席だ。お前が座っていい場所ではない。」
長い間城を不在にしていたユリウスが帰ってきたのである。
シュヴァルツ公は苦虫を嚙み潰したような顔で自分の席に戻る。

「陛下、お帰りなさい。お待ちしておりました。」
「世話をかけたな、シュトラウス。ご苦労だった。」
「陛下。妙な噂を耳にしたのですが、その噂について説明いただきたい。」
「噂とは具体的になんだ?」
「ウィステリアとともにユーフォルビアへと侵攻しているという噂です。これが真実であればユーフォルビアへの背信行為ですぞ!」
威勢を取り戻したシュヴァルツ公がユリウスに詰め寄る。
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