君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
ユリウスの言葉を聞いて何人かの顔が青ざめたのを宰相シュトラウスは見逃さなかった。
(今から隠ぺい工作しても遅いわ。陛下の命を受けて、もう既に証拠は掴んである。偉そうにしてられるのも今のうちじゃよ。)

「麻薬のことなんかより、ダニエルはどうなっているのだ。遺体はちゃんと回収したんだろうな。」
「ウィリアム国王のご恩情で、ゲッティンゲン中将の遺体は返してもらった。もうじきマグノリアに帰って来るだろう。」
「ウィステリアとは停戦をしただけで、終わっていないんだろう。ダニエルの命を奪ったウィステリアなど許すことはできぬ。今度こそ破滅させろ!」
可愛い甥の死に取り乱して喚き散らすシュヴァルツ公を見下ろして、
ユリウスは静かに息を吐く。
「戦争の行方を決める権利は私にある。お前の私情より、国のために最善となることをする方が私には重要だ。」
「何だと若造。誰のおかげで国王になれたと思っている。」
「過去の話をいちいち持ち出すな。もう終わったことだ。私は既に前を見据えている。」

「陛下、ラーデマッハー中将からご報告です!」
軍服に身を包んだ若い将校が議事堂に駆け込んでくる。
「報告を聞こう。話せ。」
「ウィステリアと我が国の連合軍はヴァランタン侯爵領を制圧。ヴァランタン侯爵を取り押さえたとのことです。」
「ユーフォルビア国王の反応は?」
「麻薬栽培の事実と、ユーフォルビア王家自体がそれに関与していた事実を突きつけられて、おとなしく降伏したということです。」
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