君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
「へぇ~この哀れな狸は、我が国民をも買っていたのかい。しかも鉱山で違法労働とはやってくれるじゃない。」
「そんな、女帝陛下。誤解です。話を聞いてください!」
ウィリアムは会談の場の護衛の任務に就いていた兵士に命じて、
シュヴァルツ公を拘束した。
女帝ウィルヘルミーナをも怒らせたこの男はもう終わりだ。

「女帝陛下、ウィリアム国王陛下。御見苦しいところを見せてしまい、申し訳ございません。この男とその一派は私が責任もって処分いたします。また、強制労働されていたもののうち両国の者は速やかに送還することも約束しましょう。この件に関する補償も十分にさせていただきます。」
ユリウスはウィルヘルミーナとウィリアムに頭を下げた。
「ユリウス国王、頭をあげて。あなたの誠意は十分こちらに伝わったわ。」
しばらくして、ウィルヘルミーナが先ほどとは一転して優しい声で語りかける。
「百戦錬磨の女帝陛下も、たまにはお優しいんですね。」
ウィリアムがからかうと、ウィルヘルミーナはニヤッと笑う。
「私、一生懸命頑張る若い男の子はついつい応援したくなっちゃうの。かつてのあなたみたいにね。」

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