君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
ユーフォルビア王国の王都ラデスフローは
「花の女神」という名にふさわしい美しい石畳や伝統的な木組みの建物が立ち並ぶ文化的な都市だが、
王都を一歩出ると、のどかな田園風景が果てしなく続いている。
温暖な気候と豊かな水源に恵まれたこの国は農業大国として世界中に穀物・植物を輸出していた。

それゆえ国内は平坦な道が多く、慣れない馬車でも比較的快適に過ごすことができたのは幸いだった。
王宮から外に出ることがなかったジゼルにとっては見るもの聞くもの全てが新しく、
国境の街につくまではひたすら窓の外を眺めていた。

そしてラデスフローから出発すること2週間、ようやく国境の街コールマールに到着した。
ここでマグノリア王国側の使者に引き渡されるのである。
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