君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
ユーフォルビアの二の舞にはなるまいと、
今日も国民のために一生懸命に働くユリウスだったが、
最近彼の頭痛の種になっていることがあった。

それはユリウスの元にひっきりなしにやって来る縁談の申し込みだ。

「なんか最近、ますます増えてますよね。この手のお誘い。」
引退した祖父に代わってユリウスの側近になったエルマーが
とある貴族から届いた舞踏会の招待状をひらひらさせながらユリウスをからかう。
「そんなものは俺に見せずに処分しておけと言っただろ。」
「でもここのご令嬢はなかなかの美人だって社交界でも評判ですよ。」
「だったらお前が行け。」

一体、何度断ったら放っておいてくれるのか。
ユリウスはうんざりしていた。
戦争後の国内政治が落ち着いて平和な世の中になると、
世間では途端に恋愛方面の華やかな話題で持ちきりになる。
特に独身で眉目秀麗な国王の恋愛事情は関心の的だった。

ウィリアム国王の要望通り、
ユリウスとジゼルの婚姻関係は正式に無効となり、
ユリウスは法的にも完全な独身になっていた。
そのため、今は空席となっているユリウスの妃の差をめぐって
世界中の良家の子女たちが熾烈な争いを繰り広げているのである。
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