君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
国内の有力貴族はもちろんのこと、
友好国や外遊した先の王族・貴族から頻繁に娘を紹介される。
この前はハイドランジア帝国の女帝ウィルヘルミーナのお茶会に招かれ、
女帝の親戚筋の令嬢を紹介されたばかりだ。
(さすがに女帝の顔に泥を塗るわけにもいかないし。あれは焦ったな。)
ユリウス本人に取り付く島がないと分かると、
その側近であるエルマーやロートシルトから懐柔しようとする者まで現れ、
この2人からはどうにかしてくれと抗議の声が上がっているほどだ。

今まで紹介された令嬢たちの中には、
確かに王妃となるに相応しい家柄も教養も美貌も兼ね備えた者もいたが、
誰ひとりとしてユリウスの心を動かす者はいない。
ユリウスの心にいるのは今でも変わらずジゼルだった。
ジゼルとは折々に手紙のやりとりをしているし、
お互いの誕生日にはプレゼントを贈るなど交流は続いている。
ユリウスがウィステリアを訪問したときにはティータイムを共にしたこともある。
しかしそれから先に進むというわけでもなく、
友達以上恋人未満という不思議な関係だった。

「国民たちも陛下のお世継ぎ誕生を心待ちにしているんです。陛下もいい年なんですから、いつまでも初恋を引きずってないで心を決めないと。」
「うるさい!偉そうに言うな。」
エルマーに痛いところをつかれて、ユリウスはムキになって言い返す。
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