君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
拗ねてそっぽを向くユリウスに、エルマーは生温かい眼差しを送る。
(全く、我が主は。なんでこんなに恋愛に奥手なんだろう。主の恋のアシストをするのも側近の仕事なのかな~)
「陛下宛ての舞踏会の招待は、本当に俺が代わりに行っても良いんですか?」
「好きにしろ。」
「じゃ~これは面白そうだから行ってみようかな?ウィリアム国王主催のマスカレード(仮面舞踏会)・・・」
「それはダメだ。」
ユリウスが慌てて招待状をひったくると、急いで中身を確認する。

差出人は間違いなくウィステリアのウィリアム国王だった。
ウィステリアでは毎年建国記念日の前後を含む3日間で様々な催しが開催され、
特に人気の催しが建国記念日の夜に開催されるマスカレードだ。
この日は国中のあちらこちらでマスカレードが開催されるので、
国民は思い思いの衣装に身を包んで年に一度の無礼講の夜を楽しむ。
そしてマスカレードの中で最も格式高いのが国王主催のマスカレードである。
王族や国の名士たちの他に、
この1年でスポーツや学問において目覚ましい活躍をあげた者などがゲストとして呼ばれるが、
一般市民への抽選枠も設けられているため毎年応募が殺到するそうだ。

「王家主催ですから、絶対にジゼル様も出席するはずです。陛下、これはまたとないチャンスですよ。」
「あぁ、そうだな。ウィリアム国王には招待の御礼と出席の返事をしておいてくれ。」
「舞踏会用の礼装と仮面の準備も私の方で準備しておきますね。」
「よろしく頼む。」
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