君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
「マジですか!!!陛下、やったんですね!」
帰りの汽車の中でエルマーは歓喜の声をあげる。
昨夜の失態についてたっぷり説教された後、
ユリウスは自分のことを話してくれた。

「うわーーー、めでたい。めでたいですよ。本当におめでとうございます。そうですか、ギーゼラ様が王妃様としてまた帰ってきてくださるんですね。こんなに嬉しいことはありません。ハンナたちも大喜びでしょう。」
「結婚はジゼルの大学卒業を待ってからだから、2年後になるだろう。」
「婚約期間2年ですか。長いですけど、しょうがないですね。」

エルマーはジゼルと言葉をかわしたことこそなかったが、
ソフィアを通じてずっと気にかけていた。

ジゼルの専属の侍女の1人ソフィアは
所領は大きくないもののマグノリアでは由緒ある子爵家の出身。
ソフィアの実家の領地がシュトラウス家の領地と隣同士だったことから、
お互いに小さい頃から知っていて、エルマーにとってはソフィアは妹のような存在だった。
ジゼルが失踪して落ち込むソフィアを励ましていたのもエルマーだ。

ところがこの兄妹のような気持ちも最近ではずいぶんと変わってきている。
きっかけは祖父の引退だった。
祖父の引退に伴って、エルマーは正式にユリウスの側近として登用された。
さすがに宰相の地位にはいないが、第一秘書としてユリウスの執務を補佐している。
さらに祖父の功績をたたえてシュトラウス家の爵位が公爵に格上げされたので、
今のエルマーは貴族の中でも最上位の位置づけだ。
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