君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
「ジゼル、待っていたよ。ようこそというよりは、お帰りというべきなのかな。」
ユリウスはジゼルの手の甲に口づけを落とす。
「またこうして戻ってくることが出来て嬉しく思います。」

ユリウスはジゼルに遅れて出てきたウィリアムとアリスの2人にも歓迎の挨拶をする。
そして王城へと向かう馬車にジゼルをエスコートしようと腰に手を回そうとすると、
何かがジゼルの腰にまとわりついているのに気が付いた。

「まだジジはお前と結婚してないんだから、馴れ馴れしく触るな。」
ジゼルの腰にまとわりついていたのはウィステリア王国王太子のエドワードだ。
まだ11歳の子どもだが、顔立ちは父親のウィリアムにそっくりである。
「こら、エディ。ユリウス様になんていう口を利くの。そんな言い方をしてはいけません。」
ジゼルが慌てて弟を諭す。
「俺はお前をジジの結婚相手として認めてないからな。」
どうやら既に義弟に嫌われているらしいとユリウスは苦笑いする。
「ユリウス様、ごめんなさいね。あの子はジジのことが大好きで、朝からずっと不機嫌なの。シスコンなのはボーセット家の血の宿命なのかしらね。どうか大目に見てやってください。」
「アリス様、お気になさらないでください。王太子様にも認めてもらえるように頑張りますので。」

馬車は2台用意していて、
1台目はユリウスとジゼル、2台目はウィリアムとアリスとエドワードが乗る予定だったが、
エドワードがジゼルにぴったり張り付いて離れないので、
やむなくユリウス・ジゼル・エドワードの3名で乗り込む。
王城に着くまでの間、ユリウスとエドワードが馬車内で無言でにらみ合っており、
ジゼルはおろおろとするばかりだった。
(ジジを一回でも泣かせてみろ。その時は今度こそ滅ぼしてやるからな。)
(このクソガキが何と言おうと明日にはジゼルは俺のもの。調子に乗れるのも今日までだ。)
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