君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
久しぶりに目の当たりにする城は、
相変わらず要塞のような風格だが依然感じた威圧感は不思議となかった。
城内の雰囲気も格段に明るくなったような気がする。

「お城の内部が少し変わっているような気がします。」
ジゼルがユリウスに話しかけると、ユリウスがニコリと微笑んで答える。
「思い切ってリフォームしたんだ。この城は築城されてからずいぶん経って老朽化していたし、使い勝手も悪くなっていたから。ジゼルにも気に入ってもらえると嬉しい。」
「あちこち探検するのが楽しみですわ。」

来賓のための貴賓室へと向かう道で、ジゼルはふと足を止める。
(この彫像の方。どこかで見た気がする。)
ジゼルの視線の先に気づいたユリウスはジゼルの横に立って、
「このプレートを見てごらん。」と彫像の台座を指さした。
「ヨーゼフ・フォン・・・シュトラウス。まぁ、宰相閣下ね!やっぱりどこかで見たことがあると思ったの。でも、彫像になっているということは・・・」
「うん。2年前に亡くなったよ。あの戦争後に隠居して領地で穏やかに過ごしていたんだけどね、安らかな最期だったと聞いている。」
「そうでしたの。宰相閣下は私にも本当に親切にしていただいて、私におじいさまがいたらこんな方だったかしらと思っていたの。」
「私にとっても厳しくて優しい祖父のような人だった。今は彼の孫のエルマーが私の側近を務めてくれているが、じぃにはまだまだ及ばないよ。」
ジゼルは、ウィリアムとアリスと談笑しているエルマーにちらっと視線を送る。
「閣下のお孫様でしたら、閣下と同様、ユリウス様に心を込めて仕えてくださるでしょうね。」
< 227 / 247 >

この作品をシェア

pagetop