君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
「両陛下のキスシーン、最高でしたわ~」
入浴後のジゼルの髪を乾かしながらエミリアがうっとりと言う。
「美男美女はやはり絵になりますねっ!私、バルコニー裏という特等席から拝見できて感激でした。」
「そんなにいいものだったかしら。よく分からないまま終わってしまって。」
今は後半のメインイベント晩餐会に向けてお色直し中である。
ジゼルの反応はお構いなしに、エミリアは一人おしゃべりに夢中になっている。
でもどんなにおしゃべりに夢中になっても、手はよどみなく動いているので
ジゼルは感心してしまった。

晩餐会用のドレスは薔薇の花びらのように生地が重なり合った豪華な一品だ。
「主役が一番派手じゃないと。」というハンナたちの意見に押されて選んだドレスだ。
装いの最後を飾るのは、やはり豪華な宝飾品だ。
正式な晩餐会では王族やそれに準ずる女性はティアラの着用が義務付けられている。
王家が所有するいくつかのティアラの中から、ダイヤモンドとパールを組み合わせたティアラを選んだ。
ティアラに付属するネックレスやイヤリングも身に着けていく。

「さぁ、出来上がりましたよ。鏡でご確認くださいませ。」
ハンナが姿見を用意してくれる。
こんな華やかなドレスと宝飾品で着飾るのは初めてで、自分が自分じゃないみたいに感じてしまう。
「魔法にかかったみたいだわ。ありがとう、みんな。」
「とんでもございません。陛下がお待ちになっているでしょう。行ってらっしゃいませ。」
入り口で待機してくれていたクララに伴われて、大広間へと急ぐ。
大広間の入り口には既にユリウスが待機していた。
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