君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
「ジゼル王女殿下はいらっしゃるか。」
滅多に人が訪れることのないグリシーヌ宮殿に
国王の側近ギルマン伯爵がやってきた。
(相変わらず、王女の住まいとは思えない貧相さだな・・・)

「ここにおりますが。」
(あの人は確か、国王陛下の側近の・・・)
返事をしたジゼルの姿を捉えたギルマン伯爵は
一刻も早くこの場を去りたいというかのように早口でまくし立てた。
「王女殿下に申し上げます。国王陛下より早急に玉座の間まで来るようにとのことです。準備ができ次第、急ぎ向かわれてくだださい。」

父からの呼び出しなど、生まれてこの方初めてではないだろうか。
まともに言葉を交わした記憶もなく、はっきり言ってどんな顔をしていたかも記憶が怪しい。
「私に用があるなんて、何かの間違いではないですか?それに一体どうのような用件でしょうか?」
「ジゼル王女殿下をお呼びするようにと仰せつかっております。要件につきましては国王陛下からお聞きなさってください。私は忙しいので、これで失礼いたします。」
ジゼル質問にもろくに答えず、ギルマン伯爵は退出してしまった。

「お姫様、早速支度をしなければ。」
ギルマン伯爵と入れ違いで入ってきたマルゴに急かされて、
急いで準備をする。
国王陛下への謁見に相応しいドレスに着替え、
髪を結い、化粧をすると大急ぎで玉座の間に向かった。
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