君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
(2曲目も踊るのかしら?)
ジゼルがどうするのかとユリウスに視線を投げかけようとした時だった。

「陛下、次は私と踊ってくださらない?」
そう言って、ジゼルを押しのけるようにしてユリウスの手を取る女性。
(この方が、ハンナたちが言っていたルイーザ様ね。)
名乗られるまでもなく、ジゼルには分かってしまった。
ウェディングドレスを連想させるようなシフォンたっぷりのシルバー系のドレスに、
大ぶりのココシュニックティアラ。中央には大粒のエメラルドが輝いている。
今日の主役はジゼルなので本来ならジゼルより目立つ装いは避けるのがマナーなのだが、
そんなことはお構いなしで「私が主役よ」と言わんばかりである。

「初めまして、王妃様。ルイーザと申します。同じ陛下の妻として、仲良くやっていきましょうね。」
上から目線で余裕たっぷりの笑みを浮かべるルイーザにジゼルは気おくれしてしまう。
「私も今日陛下とダンスするのを楽しみにしていましたの。お優しい王妃様は譲ってくださるわよね。」
YES以外の返事は許さないという圧を感じる。
「もちろんでございます。私少し休憩してまいります。」
(この人だけは刺激しちゃダメよ!)
ルイーザには目を合わせず、ユリウスに膝を折って挨拶して大人しく引き下がる。
ユリウスは何か言いたげな表情だったが、ルイーザにがっちりとホールドされてしまったため
ルイーザの相手をするより他なかった。
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