君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
「クララもそう思うか?我らの主君は本当に仕事人間だよねーま、そういうところが陛下の尊敬できるところではあるけど。じゃ、王妃様のこと頼むよ。」
「ロ、ロートシルト団長!あの、はい、もちろんです。」
突然後ろから現れた憧れの上司に声をかけられたので、
クララはいつものポーカーフェイスを崩してしまう。

クララの実家ラーデマッハー家は代々軍人の家系である。
クララの父は国王を除くと軍でナンバー2の中将の地位にあり、
参謀本部で辣腕をふるっていた。
クララはそんな父を尊敬していたし、
身体を動かすことと乗馬が好きだったので、
自ら希望して近衛騎士団に入隊した。
入隊するための推薦状は確かに父に書いてもらったが、
入隊してからは父の威光に頼ることなく真面目に励んできた。
しかし何をやっても色眼鏡で見られてしまう。
自分が手柄を立てると「さすが中将のお嬢さん」、へまをやらかすと「これだから縁故組は・・・」
次第にクララはノイローゼになっていた。

そんなとき救いの手を差し伸べてくれたのが、団長のロートシルト大佐である。
国王陛下とも昔馴染みだという彼は、
新しく来る王妃の護衛騎士としてクララを推薦してくれた。
「護衛騎士が同性の方が王妃様も安心ですし、あらぬ噂を立てられることはないでしょう。それにクララは名門ラーデマッハー家の娘で身元も保証されています。これ以上の適任はいません。」
追い詰められていた自分を救ってくれたばかりか、
自分の居場所を作ってくれたロートシルトに対して、
クララは尊敬と同時に淡い恋心を抱いていた。
(私を推薦してくれた団長の顔に泥を塗らないよう、完璧に勤めあげなくちゃ!ルイーザ様の魔の手から私が王妃様を守るんだから!)
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