君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
ユリウスからの返事は思っていたよりも早かった。
「陛下は日中は執務でお忙しいので、夕食時ならとのことです。それで構いませんか?」
「えぇ、もちろんよ。でも陛下と夕食をご一緒するのなら、着替えなければね。」
「王妃様、お任せ下さい。」
エミリアが猛スピードで準備に取り掛かる。

ジゼルが王家の食堂に行くと、
そこには既にユリウスが着席していた。
ジゼルの入室に気が付くと、目で着席を促す。
「お待たせしてしまい申し訳ございません。」
ジゼルが席に着くと、そばで控えていた侍従たちが給仕を始める。
2人だけの晩餐は和やかにスタートした。

「それで、シュトラウスからは王妃が私に話したいことがあると聞いているが。」
ユリウスが本題を切り出す。
「そうなんです。ぜひ、陛下から許可を戴きたいことがございまして。」
「用件は?」
「えっと、私が乗馬することをお許しいただきたいのです。」
「ぐっ。げほ、げほっ。乗馬だと?」
予想外の内容にユリウスは思わずせき込む。
「はい。」
コホン、と咳払いをするとユリウスはジゼルを真っすぐ見つめた。
「残念だが、許可できない。王妃が乗馬など危険すぎる。断じて認められない。」
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