君の愛に酔う　　　　　　～藤の下で出会った2人の物語～
「そんな、たまたま近くにいたからってなんの証拠もないのに犯人扱いだなんて。いい加減にしないとお父様に報告しますよ。」
ルイーザは自分は知らないの一点張りだった。
さらには包帯を巻いた足首を指さして、自分も音に驚いて捻挫してしまったので被害者だと言い張る。
（さっきまでスタスタ歩いてただろう。）
ロートシルトはため息をついた。

医務室での診断の結果、
ジゼルは多少の擦り傷はあったもののその他は外傷はなく、今は意識も取り戻している。
一方のクララはジゼルの下敷きになって地面に叩きつけられたために全身を強打し、右肩を脱臼していた。
今は王城の医務室から、実家のラーデマッハー家に戻り、静養している。
侍女の話ではジゼルはクララの容態にショックを受け、毎日クララの元にお詫びの花を送っているらしい。
またポニーのオルキスも本来なら殺処分されるところだったが、
ジゼルがユリウスに懇願し、今後一切乗馬をしないという条件で殺処分を免れた。
事件が起こるまでは毎日通い詰めていた厩舎にも、もう顔を見せていないという。

ルイーザが不自然なほどに馬場の近くに姿を見せるとクララから報告を受けていたロートシルトは、
ルイーザが犯人だろうと信じて疑わなかったが、
証拠がないのでそれ以上何もできない。
結局、この事件は証拠不十分で迷宮入りとなってしまったのだった。
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