君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
ルイーザはイライラしていた。
理由は簡単。
王妃の落馬事件の犯人扱いをされているから。
王城内でも陛下の寵愛を巡った三角関係だなどと面白おかしく噂されている。

(くそっ。あいつ、もうちょっと上手くやりなさいよね!)
ルイーザが認めることは決してないが、
この事件の首謀者はルイーザなのだ。

何かジゼルを貶める機会はないかと伺っていたところに、
最近ジゼルが乗馬を始めたという噂を耳にした。
これはチャンスかもしれないとほくそ笑んだルイーザは早速、
取り巻きに声をかけて馬場のほうに姿を見せた。
厩舎近くは獣臭がすごくて、とてもじゃないが近寄れない。
そこでいつも遠巻きにジゼルを観察することにした。

いつ、ジゼルは乗馬しているのか。
乗馬しているときは誰が近くにいるのか。
大体のジゼルの行動パターンが掴めたら、今度は実行犯選びだ。
以前から自分に好意を寄せていた父シュヴァルツ公の下僕を使うことにした。
彼はちょっと甘えてお願いしたら、すぐに実行犯役を買って出てくれた。
ルイーザは下僕に爆竹を使うタイミングは、自分がジゼルに話しかけてからだと伝えていた。
そうすることで自分が犯人だと思われない完璧なアリバイができるからだ。
しかもアリバイの承認はジゼル自身。
我ながら完璧だと思っていた。
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