君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
皆、王妃がどのような人か知りたいらしく、
代わる代わる話しかけてくれる。
話題はほどなくして落馬事件に移っていった。

「王妃様っておとなしそうな見た目なのに、乗馬なさるんですね。」
とある令嬢が声を上げる。
「乗馬って言っても、本当に嗜み程度です。あのときからはもう乗っていませんけど。」
「王妃様を庇って怪我した女性騎士は大丈夫ですの?」
「確かラーデマッハー伯爵家のクララ様じゃなかった?」
「まだ療養中ですけれど、もう少しで全快するとのことです。」
改めて思い出すと、クララには本当に申し訳なかったと思う。
「王妃様の戯れにお付き合いして、大けが負わされるなんてクララ様も災難ですわね。」
ルイーザの取り巻きの一人が棘のある言い方でジゼルを責める。
「クララ様ってもう22とかそこらでしょ。ただでさえ婚期を逃しているのに、身体に傷までついたら嫁の貰い手がなくなりますわね。伯爵夫人もさぞや頭が痛いことでしょう。」
「王妃様、責任を感じていらっしゃるならクララ様の結婚のお世話をするべきですわ。」
「えぇ、そうね・・・」
自分に負い目があるだけに、ジゼルは頷くしかできない。

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