君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
「ずいぶんと早いお帰りでしたね、どのような用件でしたでしょうか?」
いつもの温かな笑みでジゼルを迎えたマルゴは
ジゼルの茫然自失とした表情を見て顔をしかめる。

「お父上は何をおっしゃったのですか?お姫様にとって良くない知らせだったのでございますか?」
ジゼルをソファに座らせ、ひざ掛けをかけると、
気分が落ち着くようにと蜂蜜入りの紅茶を準備する。

「縁談が決まったと、陛下に言われたわ。相手はマグノリア王国のユリウス国王陛下よ。」
しばらくたってジゼルが絞り出した言葉にマルゴは愕然とする。

マグノリア王国といえば、大陸随一の軍事国家である。
国内で採れる豊富な鉱山資源を元に強大な軍事力を有し、領土を拡げてきた国だ。
5年前に病死した前国王の後継者争いで、
年若い王太子と王弟との間で王位継承戦争が勃発した。
この内戦は3年もの間続き、戦争に勝利した王太子が新国王として即位し、
国の復興を進めていると聞く。
しかしいまだに争いの火種は燻っており、いつまた内戦状態になってもおかしくないという人もいる。
「そんな国に姫様が嫁がなければならないなんて・・・」
大切に大切にお守りしてきた姫の行く末を思うと、
マルゴは涙を抑えることができなかった。
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