君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
ジゼルにとって悪夢のようなお茶会以降、
城内では「国王は王妃ではなく側室にご執心」という噂が駆け巡った。
あのお茶会に出席した招待客たちが広めたのだろう。
だとしても、ジゼルにはどうしようもできなかった。
自分がユリウスの寵愛を得ていないのは事実だったし、
ユリウスとルイーザの仲は自分には知る術がない。

ジゼルが城内を歩いていると、
そこかしこでクスクス笑う声が聞こえたり、
ハッとした顔で噂話を止めたり、
じろじろ見ながらコソコソとなにか言っていたり、
そういった者たちの姿が散見されるようになったのは正直堪えた。

ハンナたちの存在と、
文字が書けるようになったクララとの文通が
ジゼルの唯一の心の支えだった。
そして2カ月の療養を経て、クララがついに職務に復帰する日がやって来た。
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