君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
「どうぞ」
久しぶりのロートシルトの声に若干ドキドキしながらドアを開けた。

「待ってたよ、クララ。身体はもうすっかり良くなったんだね。…あ、今日はお父上もご一緒でしたか。ラーデマッハー中将、おはようございます。」
クララが扉を開けた瞬間、にこやかに近づいてきたロートシルトだが、
クララの後ろにラーデマッハー中将を見つけた途端、直立不動の姿勢になる。
「娘は全快したとはいえ本調子ではない。特別扱いは不要だが、無茶をしないようにお前がしっかり見張っておけ。では、これで失礼する。」
「はい、畏まりました。・・・ほ~あの強面の中将の父親らしいところ初めてみたよ。」
部屋を出ていく中将を見送ったあと、ロートシルトはクララに小声で語り掛ける。
「まー、中将にも釘をさされたことだし。朝練とかも程々にね。俺も心配だからさ。」
ポンポンと優しく労わるようにクララの頭を撫でる。
「帰って来たからには、国王陛下と王妃様にはご挨拶に行かないとね。お二人には10時で面会の予約取ってるから。それまでいろいろ雑用とかしといてよ。以上、もう下がっていいよ。」

国王陛下ご夫妻との面会時間まで1時間ほど時間があったので、
騎士団内の自室の掃除をしたり、お世話になっている先輩方に挨拶して時間を過ごした。
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