君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
「やっぱり、私の見立て通りね。そのベルト、よく似合っているわ。」
ジゼルからもらったサム・ブラウン・ベルトを早速装着していると、
ジゼルがニコニコと嬉しそうに話しかけてくれる。

そうやって屈託なく笑うジゼルをクララは複雑な思いで見つめていた。
王城内で王妃は孤立しているようだった。
自分が怪我で休む前は必ずしもそんなことはなかったと思う。
城内で働く者たちはみんなにこやかに挨拶していたし、王妃もそれに応えていた。
だけど今はー--

王妃が城内を歩いていても挨拶するものは少ない。
みんな王妃と関わるのを避けているようだ。
ルイーザ様やその取り巻きたちなんかはもっとひどい。
自分より身分の高いジゼルと廊下ですれ違っても挨拶はおろか道を譲ろうともしないし、
聞こえるように嫌味を言ってきたりする。

たまりかねてクララが言い返そうとしたこともあったが、
ジゼルが「いいの、気にしないで」と微笑むので
それ以上は何もすることができない。
(やっぱりあの噂は本当だったんだ。)
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