新そよ風に乗って 〜焦心〜
「はい、はい。分かったから、ちょっと待ってろ。今、ソース持ってくるから」
「あの、私が……」
手で私を制止した明良さんは、あきれ顔でキッチンに戻ってガラスの器に入った2種類のソースを持ってきてくれた。
「さあ、食べよう」
「待ち疲れた」
アハッ。
本当に、高橋さんはお腹が空いていたんだ。子供みたい。
「頂きます」
「今日は、バターライスにしてみた」
「美味そうじゃん」
「美味そうじゃなくて、美味いの」
何か、本当に高橋さんと明良さんは仲が良いな。お互いを知り尽くしているから、言い合えるんだろうけれど。
「こっちがチリソースで、こっちがサウザンアイランド。どっちも美味しいけど、好みでつけて食べてみて」
「はい。ありがとうございます」
いつの間に用意してあったのか、バターライスとチキンのグリーンサラダとシーザーサラダもテーブルに載っていた。明良さん。本当に、お料理上手だな。
「パリッとしてて美味い。ビールによく合う。悪いねー、貴ちゃん」
「フン……」
高橋さんは、運転があるからお酒が飲めないので、明良さんがわざとビールを見せびらかしている。
「陽子ちゃん。巻くの、上手いね」
「そんなことないです。明良さんのレシピが、美味しいんですよ」
本当に、パリッとしていて美味しいし、アスパラガスもプロセスチーズもどっちのソースにもよく合う。何もつけなくても、塩、コショウの味付けが効いていて美味しい。
「陽子ちゃん。もっと、食べないと」
「もう、お腹いっぱいです」
何だか、ついつい美味しくて、いつもより食べてしまっている。
「貴博は、燃料切れ落ち着いたか?」
「ああ。もう、食えない」
「食べ過ぎ」
「飲めないから、食うしかないだろ? 誰かは、人の気も知らないで見せびらかすし……」
高橋さんと明良さんは、本当に名コンビだな。あれ? 迷コンビ?
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